【アリアハン暦 1274年4月17日】
通りを行き交う人々、店の賑わいや立ち並ぶ家々。
そんな当たり前の光景が、なんだかうれしい。
ようやくレーべに着いたぼくたちは、村の宿屋で久しぶりに安心して体を休めることができた。
食堂で夕食をとった後、ベッドに腰かけて、ぼくはこの記録書を書いている。
ひどく眠いので、横になったらすぐ眠ってしまうだろう。
【アリアハン暦 1274年4月18日】
海を越える方法は、ただ一つ。いざないの洞窟にある『旅の扉』を通れば別の大陸に出られると、レーベの長老が教えてくれた。
洞窟がある岩山は、村からでも一望できる距離だ。しかし途中の岩場は険しく、いざないの洞窟は今や魔物の巣窟となっている。
ぼくたちはレーべの道具屋で、山越えに必要な装備を整えることにした。
こんなの似合わないのに、とカダルはぶつぶつ文句を言いながらも、新調した革の鎧を身に着ける。ぼくも、旅人の服から革の鎧に着替えた。
フルカスは近衛兵の立派な鉄の鎧を着けているし、フォンは重い鎧など邪魔なだけらしい。速さが落ちるほうが、武闘家にとっては命取り。そう言って、鎧はおろか防具さえ持とうとしない。
確かに、鎧を身に着けているぼくたちは、彼女ほど身軽には動けないのだが。
まさか、切り立った岩山を、わずかな足場を頼りに何時間もかけて登るはめになるとは思わなかったけれど。
10センチでも外に足を踏み出したら、まっ逆さまに落ちかねない危険な断崖絶壁もあった。まったく生きた心地がしない。
目的地に辿り着いたのは、日もだいぶ傾いた頃。水面がきらきらと輝く泉が湧き、泉のそばに、苔むした洞窟が怪しく口を開けていた。
旅の扉は、この洞窟の奥にある。昔は旅人が自由に行き来していたが、かつての戦争の折に封印され、今ではそんな通路があることさえ忘れ去られてしまった。