2021/07/06

4. 幕間:フルカスとカダルの追想

フルカスの追想

 アリアハンにこの人ありと言われた、歴戦の勇者オルテガ。その偉大な勇者に、俺は子供の頃から憧れていた。

 腕が立つだけじゃない。あの人は他人を包み込む温かさ、思いやり、そして信念を貫き通す強い意志と、勇気を持っていた。

 魔物と闘い、火山の火口に落ちて死んだというが、俺には信じられない。あれほどの勇者が。

 ノヴァク王から頼まれるまでもなく、俺も勇者オルテガの意に添い、魔王討伐の旅に出たいと考えていた。
 そして今、ようやく念願が叶った。

 オルテガの息子は、少しづつ腕を上げてきてはいるが、まだとても勇者とは呼べず、父親に遠く及ばない。

 それでも、いつの日か立派な勇者になるのだろうか。
 オルテガのように、誰をも惹き付けるような、強く優しい男に。


カダルの追想

 レーべで忠告された通り、いざないの洞窟の中は魔物がゴロゴロいた。

 最初に襲ってきたのは、毒の息を吐くバブルスライム。それを、フルカスが一刀両断。フォンも強い。なんでも、魔物の “気” の流れを読むことができるんだとか。

 アレルは、やっぱり、あのオルテガ様の息子だ。回復魔法まで使えるとは思わなかった。
 今のところ、幸か不幸か、おれの出る幕はそんなにない。

 おれの両親は、ずっと昔魔物に殺された。人が死ぬのはもう見たくない。おれは神父のじいちゃんの跡を継いで、僧侶になった。僧侶なら、回復魔法を使えるから。

 唯一の身内だったじいちゃんも魔物に襲われて、おれは魔物に復讐を誓った。

 ルイーダの酒場で勇者オルテガの息子に出会えたのは、神様のお導きってやつだろう。
 攻撃魔法は、少し前に真空呪文のバギマを修得した。もっともっと強力な攻撃呪文を使えるようになりたい。

 まずは、魔物だらけのこの洞窟を抜けるのが最初の修行だ。


イングリッシュパーラー